債務整理中にお金が必要になったとき、「不動産担保ローンなら、担保があるから審査に通るのではないか?」と考える方は少なくありません。
結論から申し上げますと、債務整理中における新たな借り入れは非常に困難なのが現実ですが、不動産担保ローンの場合は、状況により審査の対象となるケースが存在します。
この記事では、金融関連法規の観点から、債務整理中でも不動産担保ローンの審査対象となり得る理由や、現在のステータス別の審査傾向、そして融資以外の代替手段について、客観的な事実に基づいて解説します。
通常、債務整理を行うと指定信用情報機関に異動情報(事故情報)が登録され、無担保のカードローンなどの新規契約は原則としてできなくなります。それにもかかわらず、不動産担保ローンが審査の対象となる場合があるのには、法的な背景があります。
貸金業者からの無担保融資は、貸金業法に定められた「総量規制」により、原則として年収の3分の1を超える貸付けが禁止されています。債務整理をされている方は、すでに借入残高がこの基準に達しているケースが大半です。
しかし、一定の条件を満たす不動産担保ローンは、この総量規制の「除外貸付け」または「例外貸付け」に該当する場合があります。
貸金業法上、ご自宅を担保とする貸付けや、不動産の売却予定代金により返済される貸付けなどは、所定の要件を満たすことで総量規制の枠外、あるいは例外として扱われます。そのため、信用情報に懸念があっても、現在の返済能力と担保不動産の価値を総合的に判断し、融資の可否を審査する貸金業者が存在します。
「債務整理中」といっても、手続きの進行状況によって審査の傾向は大きく異なります。
新規の借り入れは原則として不可能です。
専門家に債務整理を委任し、債権者と交渉している期間中の新たな借り入れは、交渉の破綻や専門家の辞任に直結する重大な契約違反行為となり得ます。この段階での融資申し込みは控えてください。
審査は非常に厳格に行われます。
任意整理や個人再生の再生計画に基づき返済を継続している期間です。大半の金融機関では審査通過が困難ですが、不動産の担保価値と現在の安定した収支状況が認められた場合に限り、一部の貸金業者で審査の対象となることがあります。
審査を通過する可能性が出てきます。
対象となる債務は完済したものの、信用情報機関に異動情報が残っている期間です。現在の収入状況に問題がなく、十分な担保価値が認められれば、融資を受けられる可能性があります。
審査の基準は各社で異なりますが、債務整理の履歴がある場合、特に以下の点が厳しく評価されます。
住宅ローンの残債がない、あるいは残債が少なく、不動産の市場価値(評価額)が借入希望額を十分に上回っているかが重要視されます。
過去の債務整理の事実よりも、「現在、毎月の返済を滞りなく行える安定した収入源があるか」が厳密に審査されます。
ご本人名義の不動産がない場合でも、親族などの不動産所有者が担保提供に同意し(物上保証人となり)、法的な手続きを適正に行える場合は、審査の対象となることがあります。
現在返済中の場合、取り決めた返済計画を一度の遅れもなく履行しているという実績が、現在の信用力を測る一つの指標となります。
債務整理の履歴がある場合、銀行の提供する不動産担保ローンは、保証会社の信用情報照会基準により、原則として審査を通過することができません。
そのため、過去の履歴だけでなく、現在の返済能力や不動産の担保価値を独自の基準で評価する「ノンバンク(正規の貸金業者)」が比較検討の対象となることが一般的です。
貸金業者を利用する場合は、必ず金融庁の「登録貸金業者情報検索入力ページ」で正規の登録業者であることを確認してください。また、銀行と比較して実質年率(金利)が高く設定される傾向があり、融資事務手数料や登記費用も発生するため、契約の事前交付書面等をよく確認することが重要です。
仮に審査を通過したとしても、以下のリスクと法的制約を十分に理解する必要があります。
債務整理の手続きや返済が進行中の場合、新たな借り入れが法的なトラブル(自己破産における免責不許可事由への抵触など)を引き起こす可能性があります。必ず、手続きを依頼した専門家に事前に相談してください。
万が一、返済が滞った場合、担保に提供した不動産は貸金業者によって差し押さえられ、競売等によって売却・処分されます。大切なご自宅や資産を失うリスクを許容できるか、慎重な判断が求められます。
既存の債務整理の返済に加えて、不動産担保ローンの返済(元金+利息)が上乗せされます。家計の収支を客観的に見直し、確実に完済できる見通しが立たない借入は行うべきではありません。
現在すでに不動産担保ローンを利用中で、返済が困難になり債務整理を検討している場合の法的な扱いは以下の通りです。
不動産担保ローンの債権者を整理の対象から外し、これまで通りの返済を継続することで、担保不動産を維持しながら他の無担保債務だけを交渉によって減額・分割できる可能性があります。
裁判所の手続きにおいて「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」が適用されれば、自宅を維持したまま他の債務を減額できる可能性があります。ただし、担保権の実行(競売)を防ぐための厳格な要件を満たす必要があります。
原則として、担保権者(金融機関や貸金業者)によって別除権が直ちに行使され、不動産は競売等により任意売却または強制売却されます。ご自宅を手元に残すことはできません。
借り入れによる解決が難しい場合、または返済リスクを避けたい場合は、以下の代替手段をご検討ください。
ご自宅を不動産会社等に売却してまとまった資金を得た後、その不動産会社と賃貸借契約を結び、家賃を支払いながら同じ家に住み続ける方法です。新たな借り入れ(負債)ではないため、総量規制や信用情報の影響を受けにくいという特徴があります。
ご自宅を担保に金融機関から融資を受け、毎月の支払いは原則「利息のみ」とする商品です。元本は、ご契約者がお亡くなりになられた際などに不動産を売却して一括返済します。利用には年齢制限や対象エリアなどの条件があります。
生活資金にお困りの場合、国や自治体が設けている「生活福祉資金貸付制度」などの公的なセーフティネットを利用できる場合があります。まずはお住まいの地域の社会福祉協議会や自治体の窓口へご相談ください。
A.手続きの種類や信用情報機関によって異なりますが、一般的には債務整理の手続き完了(または完済)から、おおむね5年程度で登録情報が抹消されます。
A.ご本人単独名義の不動産を使用し、連帯保証人などが不要な契約であれば、貸金業者からご家族へ直接連絡が行くことは原則としてありません。ただし、契約書類や郵便物がご自宅に届くことで知られる可能性はあります。
A.絶対に利用しないでください。貸金業法第16条により、貸金業者は「審査が甘い」「必ず借りられる」といった誇大広告や、借り入れが容易であることを過度に強調する表現を固く禁じられています。このような宣伝を行う業者は、違法なヤミ金融業者である可能性が極めて高いため、接触を避けてください。
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